PCS

PCSとは

  • Pharmaceutical Communication Standard:PCSは、コミュニケーション領域のコンピテンシーです。
  • 主観的・客観的な情報から定義しました。
  • 学生や従業員薬剤師の行動評価や能力開発指針として用いることができます。
コンピテンシーとは、望ましい成果をあげる人の行動特性のことです。優秀な人材の行動特性を言語化し定義することで、どういう行動を取ると望ましい成果を上がられるかがわかります。
薬剤師業務においてコミュニケーション力が重要なことに異論はないと思いますが、ではどの程度のコミュニケーション力を有していればよしと言えるのでしょうか? 残念ながらこの問いに対する明確な答えはありません。 そこで、薬剤師にとっての望ましいコミュニケーション力とはいったいどのレベルなのかを明確にするために、コミュニケーション領域のコンピテンシーを定義しました(JSPS科研費 JP16K08417)。 マクロ環境分析の手法の一つであるPEST分析(P:政治的、E:経済的、S:社会的、T:技術的)によって薬剤師を取り巻く外部環境から薬剤師に求められる役割、業務、職域などを分析しました。
また、諸外国の薬剤師会などの資料から薬剤師のコミュニケーションに関するベストプラクティスや指針を抽出しました。 さらに、患者および他職種を対象としたフォーカス・グループ・インタビューを行い、ステークホルダーから見たコミュニケーション力の要件を抽出しました。
これら3つの手法により、コンピテンシーを定義しました。一覧表としてページ下部よりダウンロードすることができます。 PCSは、4項目のクラスター(大項目)、10項目のコンピテンシー(中項目)、40項目のサブコンピテンシー(小項目)、サブコンピテンシーを行動レベルで記述した「基準行動」で構成されています。
クラスター 4項目 コンピテンシー 10項目 サブコンピテンシー 40項目 基準行動 40項目
100 基本行動 110 自己をコントロールする 111 冷静さ 不測の事態が起きても、動揺して言動を乱すことなく冷静に対処している。
112 安定性 自分や相手の感情に左右されず、安定した言動を取っている。
113 倫理観 医療人・組織人としての倫理に則り、公平無私な態度を取っている。
114 自己肯定 失敗やトラブルなどにめげたり、言い訳したりせずに、自尊心を保ち、前向きな言動を取っている。
120 プロフェッショナリズムを発揮する 121 自己研鑽の成果の発揮 専門職能だけでなく、対人スキルなどの能力を高めるための研鑽を積み、かつその能力を他者のために発揮している。
122 薬剤師としての職責と信念 相手との利害や立場(ポジションパワー)の違いに影響されずに、薬剤師としての職責を果たすために信念を貫く主張をしている。
123 謙虚さ 自身の能力や職域の限界を認識し、必要に応じて他者に意見を求めたり、失敗やクレームに対して素直に謝罪したりするなど、謙虚で真摯な言動を取っている。
124 粘り強さ 相手の間違いや誤解、無関心さ、無理解を放置せず、両者にとって最善の解決策を見出すために、粘り強く説明、交渉、説得を続けている。
125 リスクマネジメント 言い間違い、聞き間違いなどのコミュニケーションエラーを防止するために、必要に応じて何度も確認し、記録を残している。
200 対人行動 210 対人感受性を示す 211 対人理解 人に関心を持ち、相手の言動の背景にある想いや真意などの解釈モデル、価値観をくみ取ろうとしている。
212 受容・共感 持続可能な信頼関係を構築するために、相手の情報や感情を受け止め、共感し、尊重している。
213 言動の選択 相手の感情や理解度に配慮し、自らの言動を選択している。
214 患者・生活者志向 常に患者・生活者の便益や安全性を最優先した判断と言動を取っている。
220 よりよい人間関係を構築するためのコミュニケーション行動を実践している 221 豊富な語彙と非言語的コミュニケーション 相手に十分理解してもらうために、豊富な語彙と非言語的コミュニケーションを用いている。
222 傾聴 うなづき、相づち、オウム返し、要約などの傾聴のスキルを活用している
223 アサーション 相手の価値観や要望を尊重しつつ、自身の考えや提案をしっかり相手に伝えている。
224 環境設定 プライバシーや個人情報に配慮し、相手が話しやすい環境や雰囲気を作っている。
225 医療ICTの活用 コミュニケーションを促進するために、適切な医療ICTを活用している。
226 配慮と工夫 通常のコミュニケーションが成立しにくい高齢者や障碍者のような相手に対しても、配慮と工夫をしている。
227 プレゼンテーション 複数を対象とした場面において適切に情報提供を行っている。
228 社会人としての対人行動 社会人としての基本的なマナーを前提として、礼節をわきまえつつ、場面や状況に即して適切な態度、言葉遣いで相手に接している。
230 チームをマネジメントする 231 専門領域のイニシアチブ 専門領域においては、他職種に対して積極的に意見を伝え、イニシアチブを発揮している。
232 リーダーシップ・フォロワーシップ チームをマネジメントし成果を出すために、職種や職務範囲にこだわらず、積極的にリーダーシップ・フォロワーシップを発揮している。
300 問題解決行動 310 患者・生活者のニーズや問題点を把握する 311 解釈モデルの把握 効果的な質問を用いて、患者・生活者の訴え、まだうまく言語化できていない想いを傾聴し、解釈モデルの把握を試みている。
312 薬学的管理に必要な情報の収集 薬学的管理のために必要な情報(アドヒアランス、効果、副作用の発現状況、患者の生活背景等)を適切なタイミングで聞き出している。
313 情報共有ツールの効果的な活用(情報収集時) 患者情報の収集において、お薬手帳、健康手帳などの情報共有ツールを積極的に活用している。
314 問題抽出 得られた情報から患者・生活者のニーズや問題点を正確に把握するとともに、患者・家族および顧客自身が気が付いていない問題点を抽出している。
315 情報の記録 薬学的管理や顧客の健康行動支援のために必要な情報を十分に記録している。
320 患者・生活者と情報を共有する 321 情報提供 服薬管理や健康管理のために必要な情報を、適切なタイミングで、患者・生活者が理解しやすい方法で提供している。
322 情報共有ツールの効果的な活用 情報共有において、お薬手帳、健康手帳などのツールを積極的に活用している。
323 問題解決 患者・生活者とともに実行可能な解決策を見出し、目標を設定し、解決行動の進捗を共有している。
324 理解度の確認 薬剤師が提供した情報を患者・生活者が確実に理解し、疑問点や不安がないかどうかを確認している。
330 患者・生活者を教育する 331 自己決定支援 患者・生活者が、望ましい薬物療法や健康行動を自己決定し、自己効力感を高められるよう十分な情報を提供している。
332 価値の説明 患者・生活者がお薬手帳等のツールを積極的に活用し、自身の情報を漏れなく提供することが、自分の便益や安全性の確保につながるということを患者・生活者に説明している。
400 他職種連携 410 他職種と協働する 411 人間関係構築 普段から親しみを込めた挨拶や連絡などを通じて、地域や自組織における良好な関係を構築しようと努めている。
412 互いの理解 お互いの職能や役割を尊重しつつ、責任範囲、ニーズ、改善点などを常々確認し合っている。
413 専門知識・技能の伝達 患者・生活者の支援のために、他職種に対して薬剤師の専門知識や技能を惜しまずに伝達・共有している。
420 他職種と患者・生活者の問題を解決する 421 情報収集 患者・生活者の支援のために必要な情報を、関係するすべての職種から適切なタイミングで聞き出している。
422 情報共有 自己完結せずに、適切なタイミングで関係する職種に「ほう・れん・そう」し、情報を共有している。
423 問題解決 他職種とともに、患者・生活者の問題を抽出し、実行可能な解決策を見出し、目標を設定し、解決行動の進捗を共有している。
100 基本行動
  110 自己をコントロールする
    111 冷静さ 不測の事態が起きても、動揺して言動を乱すことなく冷静に対処している。
    112 安定性 自分や相手の感情に左右されず、安定した言動を取っている。
    113 倫理観 医療人・組織人としての倫理に則り、公平無私な態度を取っている。
    114 自己肯定 失敗やトラブルなどにめげたり、言い訳したりせずに、自尊心を保ち、前向きな言動を取っている。
  120 プロフェッショナリズムを発揮する
    121 自己研鑽の成果の発揮 専門職能だけでなく、対人スキルなどの能力を高めるための研鑽を積み、かつその能力を他者のために発揮している。
    122 薬剤師としての職責と信念 相手との利害や立場(ポジションパワー)の違いに影響されずに、薬剤師としての職責を果たすために信念を貫く主張をしている。
    123 謙虚さ 自身の能力や職域の限界を認識し、必要に応じて他者に意見を求めたり、失敗やクレームに対して素直に謝罪したりするなど、謙虚で真摯な言動を取っている。
    124 粘り強さ 相手の間違いや誤解、無関心さ、無理解を放置せず、両者にとって最善の解決策を見出すために、粘り強く説明、交渉、説得を続けている。
    125 リスクマネジメント 言い間違い、聞き間違いなどのコミュニケーションエラーを防止するために、必要に応じて何度も確認し、記録を残している。
200 対人行動
  210 対人感受性を示す
    211 対人理解 人に関心を持ち、相手の言動の背景にある想いや真意などの解釈モデル、価値観をくみ取ろうとしている。
    212 受容・共感 持続可能な信頼関係を構築するために、相手の情報や感情を受け止め、共感し、尊重している。
    213 言動の選択 相手の感情や理解度に配慮し、自らの言動を選択している。
    214 患者・生活者志向 常に患者・生活者の便益や安全性を最優先した判断と言動を取っている。
  220 よりよい人間関係を構築するためのコミュニケーション行動を実践している
    221 豊富な語彙と非言語的コミュニケーション 相手に十分理解してもらうために、豊富な語彙と非言語的コミュニケーションを用いている。
    222 傾聴 うなづき、相づち、オウム返し、要約などの傾聴のスキルを活用している
    223 アサーション 相手の価値観や要望を尊重しつつ、自身の考えや提案をしっかり相手に伝えている。
    224 環境設定 プライバシーや個人情報に配慮し、相手が話しやすい環境や雰囲気を作っている。
    225 医療ICTの活用 コミュニケーションを促進するために、適切な医療ICTを活用している。
    226 配慮と工夫 通常のコミュニケーションが成立しにくい高齢者や障碍者のような相手に対しても、配慮と工夫をしている。
    227 プレゼンテーション 複数を対象とした場面において適切に情報提供を行っている。
    228 社会人としての対人行動 社会人としての基本的なマナーを前提として、礼節をわきまえつつ、場面や状況に即して適切な態度、言葉遣いで相手に接している。
  230 チームをマネジメントする
    231 専門領域のイニシアチブ 専門領域においては、他職種に対して積極的に意見を伝え、イニシアチブを発揮している。
    232 リーダーシップ・フォロワーシップ チームをマネジメントし成果を出すために、職種や職務範囲にこだわらず、積極的にリーダーシップ・フォロワーシップを発揮している。
300 問題解決行動
  310 患者・生活者のニーズや問題点を把握する
    311 解釈モデルの把握 効果的な質問を用いて、患者・生活者の訴え、まだうまく言語化できていない想いを傾聴し、解釈モデルの把握を試みている。
    312 薬学的管理に必要な情報の収集 薬学的管理のために必要な情報(アドヒアランス、効果、副作用の発現状況、患者の生活背景等)を適切なタイミングで聞き出している。
    313 情報共有ツールの効果的な活用(情報収集時) 患者情報の収集において、お薬手帳、健康手帳などの情報共有ツールを積極的に活用している。
    314 問題抽出 得られた情報から患者・生活者のニーズや問題点を正確に把握するとともに、患者・家族および顧客自身が気が付いていない問題点を抽出している。
    315 情報の記録 薬学的管理や顧客の健康行動支援のために必要な情報を十分に記録している。
  320 患者・生活者と情報を共有する
    321 情報提供 服薬管理や健康管理のために必要な情報を、適切なタイミングで、患者・生活者が理解しやすい方法で提供している。
    322 情報共有ツールの効果的な活用 情報共有において、お薬手帳、健康手帳などのツールを積極的に活用している。
    323 問題解決 患者・生活者とともに実行可能な解決策を見出し、目標を設定し、解決行動の進捗を共有している。
    324 理解度の確認 薬剤師が提供した情報を患者・生活者が確実に理解し、疑問点や不安がないかどうかを確認している。
  330 患者・生活者を教育する
    331 自己決定支援 患者・生活者が、望ましい薬物療法や健康行動を自己決定し、自己効力感を高められるよう十分な情報を提供している。
    332 価値の説明 患者・生活者がお薬手帳等のツールを積極的に活用し、自身の情報を漏れなく提供することが、自分の便益や安全性の確保につながるということを患者・生活者に説明している。
400 他職種連携
  410 他職種と協働する
    411 人間関係構築 普段から親しみを込めた挨拶や連絡などを通じて、地域や自組織における良好な関係を構築しようと努めている。
    412 互いの理解 お互いの職能や役割を尊重しつつ、責任範囲、ニーズ、改善点などを常々確認し合っている。
    413 専門知識・技能の伝達 患者・生活者の支援のために、他職種に対して薬剤師の専門知識や技能を惜しまずに伝達・共有している。
  420 他職種と患者・生活者の問題を解決する
    421 情報収集 患者・生活者の支援のために必要な情報を、関係するすべての職種から適切なタイミングで聞き出している。
    422 情報共有 自己完結せずに、適切なタイミングで関係する職種に「ほう・れん・そう」し、情報を共有している。
    423 問題解決 他職種とともに、患者・生活者の問題を抽出し、実行可能な解決策を見出し、目標を設定し、解決行動の進捗を共有している。

PCSの活用

  • 基準行動を使って、職場でのパフォーマンス評価に活用。
  • 自身の能力開発の目標として活用。
  • ACSTセミナーで薬剤師役のパフォーマンス評価に用いるルーブリックの素材として活用。
PCSは、薬剤師のコミュニケーション領域のコンピテンシーなので、望ましい行動が書かれています。したがって、自分自身や他者の行動とこの基準行動を比較することで、現状のパフォーマンスレベルや成長課題を知ることができます。 また、PCSを元にACST(Advanced Communication Skill up Training)セミナーで用いられる6つのシナリオに応じたルーブリック評価表が作られています。 PCSの基準行動が求められる業務場面を想定した6つのシナリオを作成しました。この6つの場面で、模擬患者とのロールプレイを行い、どれだけ基準行動に近いパフォーマンスができているかをルーブリックによって評価する体験学習セミナーがACSTです。PCSのサブコンピテンシーNo.がルーブリックにも記載されていますので、どのサブコンピテンシーがどのシナリオと対応しているかがわかります。

サブコンピテンシーがどのシナリオと対応しているかは下表を参考にしてください。

サブコンピテンシーがどのシナリオと対応しているかはこちらのPDFを参考にしてください。

対応表(PDF)

サブコンピテンシー シナリオ1 患者感情 シナリオ2 服薬アドヒアランス シナリオ3 お薬手帳 シナリオ4 ポリファーマシー シナリオ5 がん シナリオ6 他職種
111冷静さ          
112安定性        
113倫理観          
114自己肯定          
121自己研鑽の成果の発揮          
122薬剤師としての職責と信念        
123謙虚さ          
124粘り強さ      
125リスクマネジメント        
211対人理解  
212受容・共感  
213言動の選択  
214患者・生活者志向    
221豊富な語彙と非言語的コミュニケーション    
222傾聴  
223アサーション  
224環境設定      
225医療ICTの活用            
226配慮と工夫          
227プレゼンテーション            
228社会人としての対人行動    
231専門領域のイニシアチブ          
232リーダーシップ・フォロワーシップ          
311解釈モデルの把握  
312薬学的管理に必要な情報の収集    
313情報共有ツールの効果的な活用(情報収集時)      
314問題抽出
315情報の記録          
321情報提供    
322情報共有ツールの効果的な活用        
323問題解決        
324理解度の確認        
331自己決定支援        
332価値の説明          
411人間関係構築        
412互いの理解        
413専門知識・技能の伝達        
421情報収集        
422情報共有        
423問題解決          

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